「せんぱいんの詩(うた)」 僕につけるくすり詩(うた) すぎむらとものり

せんぱいの詩(うた)

すぎむらとものり

よく うつむくクセがあるからね。

するととてもくるしいからね。

そのたびに顔をあげることを

おぼえてきたよ。

 

ほんとうに よく こごえるからね

するととてもくるしいからね。

そのたびにひかりのほうを

むいてきたよ。

 

ボクの枝が無数に

まがってのびているのは

なんどもまちがっては

えらびなおしてきたからだ。

 

下をむいては 上をむき

下をむいては 上をむく。

それでいいと思うんだ。

 

このまちはときどき寒いからね。

こごえるときもあるんだよ。

じかんをかけて ひかりのほうへ

むりをせずに あるけばいいんだ。

 

― ひらひらと世のなかから

  こぼれおちたような僕に

  それはやさしく聞こえてきた

  落葉樹の詩。

 

  こごえる季節に

  わざわざゆたかな葉を落とし

  生きるすがたを教えてくれた

  ひかりかがやく せんぱいの詩。