すぎむらとものり
つめたい季節が苦手だから
よりそいあって固まった。
こわいこわい人の街。
一人だけちがったら
きらわれてしまうから
笑顔で上手に顔をかくした。
やさしいと言われたけれど
自分を守ることばかり考えていた。
ほんとうは誰のことも見ていない。
目立たないすみっこで
ねらわれない暗がりで
体をよせあうてんとう虫。
そのちいさな体に
星を背負っているなんて
少しも知らないてんとう虫。
おてんと様を背中にのせて
あたり一面 ひかりの世界。
それがキミのおかげだと
少しも知らないてんとう虫。
そこがかわいいところでも
あるのだけれど
やっぱり言わずにはいられない。
春は来てるよ。
キミのなかに。
春はキミだよ。
生まれたときから。
たとえ今 目の前が
どんなにきびしい冬だろうと
キミの羽あかりが照らしだして
それが見えているんだよ。
キミがずっと信じなかった
キミのなかから
ほんとうのキミが呼んでいる。
キミがずっとあきらめてきた
キミのなかから
ほんとうのキミが
大丈夫だと笑っている。
泣いていいんだ。
転んでいいんだ。
あたたかい涙がこぼれてくる
そのずっと上流から
いつもキミを照らしている
ひかりこそがキミ。
飛べ。てんとう虫。
大好きなほうへ。
キミから見えないまぶしい羽は
もっと自由に飛びたがっている。
キミがゆくどんな場所も
キミがいるそれだけの理由で
輝きのなか。
考えだしたら
きっとキミはためらうから
どうか心のままに。
もっともっと
人は
純粋でいい。
向かい風が起こるのは
心がもう走り出したから。
羽は向かい風で
舞い上がる。
飛べ。てんとう虫。
大好きなほうへ。
そのためにキミは生まれてきたんだ。
飛べ。てんとう虫。
いちばん大切だと思うほうへ。
キミよ。
迷わずに飛べ。