「旅の詩(うた)」 僕につけるくすり詩(うた) すぎむらとものり

旅の詩(うた)

すぎむらとものり

 

あの少年のとなりに

ボクはすわった

家のどこにも

外のどこにも

仲間がいなくて

ひざをかかえて

ふるえていた

あの少年のとなりに

ボクはすわった

 

なんにも言わないで

日がくれるまで

ならんですわった

あめ玉をさしだすと

少年ははずかしそうに

うけとった

 

あの青年のとなりに

ボクはすわった

公園で仲よく遊ぶ

親子を見て

しめつけられる胸を

もてあます

あの青年のとなりに

ボクはすわった

缶コーヒーをさしだすと

青年はさわやかに

笑った

 

あの少年を

あの青年を

この世界に

見つけるたびに

時をこえて

ボクはなんども

若い頃のボクに

会いにいった

 

いつもなんにも

言わないで

となりにすわった

話してくれるまで

あたたかな目で

となりにすわった

 

あの少年はいま

元気に笑っている

あの青年はいま

こころから

笑っている

 

みんないっぱい

泣いたあとで

ボクといっしょに

泣いたあとで

 

みんないっぱい

おこったあとで

ボクといっしょに

おこったあとで

 

鼻をたらして

うなり声をあげて

ぶざまで  みじめで

それはとても みにくくて 

でもぜんぶが

きれいごとじゃなかったから

こころはかるく

時をこえた

 

いっしょに泣いただけなのに

いっしょにおこっただけなのに

はじめて胸が

あたたかかった

いちばん欲しかったものに

ボクらはつつまれて

またおおげさに泣いた

 

鼻をたらして

うなり声をあげて

やかましいほどに涙は

この世界の隅々まで

あたためてゆくんだ

これがボクの旅の詩(うた)

地球にあげる輝きの詩(うた)