すぎむらとものり
太陽は見ていた。
影踏みの少年を。
大嫌いな自分を消そうとして
自分の影を踏みつける少年を。
このみにくい場所さえなければ
ボクだって愛されるのに。
おろか者があそこにいると
街じゅうの人がさけて通った。
一日中影踏みはつづいた。
夕焼け空にうかぶ少年を
なんて美しいのだろうと
この星のずっと向こうから
太陽だけが見ていた。
影ばかりを見て
少年は大人になった。
人の中にも同じ影を探しては
夢中で踏みつけた。
正しい人だとほめられたけど
影では皆に嫌われた。
踏み消したはずの影の中で
いつも一人ぼっちだった。
きりがない。
ここはのろわれた世界だ。
太陽は見ていた。
大人になった少年を。
背中を向けつづける
大好きなあの少年を。
心の向きがちがうから
目の前に影がのびてしまう。
影は光がたしかにあることを
伝えているだけ。
自分の一部を憎んではいけない。
そのぶん人は
力をなくすのだから。
ただ日に向かい歩き出せば
影がお前を押し出すように
支えてくれることを
知るだろう。
ああ この声を
届けることができたなら・・・。
もっと強く輝けば
もっと強く照らしだせば
お前は私に気づくだろうか。
でも近づきすぎたら
私は
地球の全てを傷つけてしまう。
まわる地球の背中を見送り
太陽は今日も手をふる。
少年よ。
ゆっくり眠るといい。
あんしんしていい。
光を見て歩き出すお前を
私は何度でもここで待つから。
おやすみ またあした会おう。