「クラクション」 僕につけるくすり詩(うた) すぎむらとものり

クラクション

すぎむらとものり

お客さんという乗り物に乗って

クラクションを鳴らしまくる。

そういう人に囲まれて君は泣いた。

 

親という乗り物に乗って

クラクションを鳴らしまくる。

そういう人に囲まれて君は泣いた。

 

上司という乗り物に乗って

クラクションを鳴らしまくる。

そういう人に囲まれて君は泣いた。

 

部下という乗り物に乗って

クラクションを鳴らしまくる。

そういう人に囲まれて君は泣いた。

 

心底こりごりだと思うたびに

君も僕も目を覚ます。

自分という乗り物に乗って

無意識に鳴らしていた

けたたましいクラクションから

あわてて手を離す。

 

もうこりごりだと思うたびに

君はずっとやさしくなった。

もううんざりだと思うたびに

僕はほんとにやさしくなった。

 

数えきれないこりごりや

数えきれないうんざりが

人を静かに変えてゆく。

 

うん。会えてよかった。

うん。会えてよかったんだ。

街じゅうのクラクションに

今 ありがとう。