「星どろぼうの詩(うた)」 僕につけるくすり詩(うた) すぎむらとものり

星どろぼうの詩(うた)

すぎむらとものり

星を見つけた。

あまりにきれいな星だから

ボクは星をポケットに入れた。

だれにも見つからないように

ポケットのおくふかくにしまった。

 

あまりにきれいな星だから

ボクはいっぱいよくばった。

ポケットがいっぱいになると

大きなふろしきで星をつつんだ。

星はかがやくから気をつけないと

みんなに気付かれてしまう。

むすびめはきつくした。

 

ボクがひとりじめするたびに

空から星はきえていった。

あまりにあかるい星だから

あっというまにくらくなった。

あまりにあたたかな星だから

あっというまにさむくなった。

なんだかとてもかなしかった。

 

星のうつくしさも

星のすばらしさも

ボクがいちばんしっている。

星だってわかっている。

だけどひとりじめしたせいで

ボクも星を見れないなんて。

 

― やっぱり星は空に帰そう。―

 

むすびめをほどくたびに

星は空にひろがった。

みんなからもよく見えるように

とおいばしょに星をうつした。

 

星がわらった。

星がわらった。

 

あまりにかわいい星だから

つい、のばしかけた手を

ボクはそっとポケットにしまった。

 

こころがわらった。

こころがわらった。

 

星とおなじかがやきが

ボクのなかでたしかにわらった。