よく うつむくクセがあるからね。
するととてもくるしいからね。
そのたびに顔をあげることを
おぼえてきたよ。
ほんとうに よく こごえるからね
するととてもくるしいからね。
そのたびにひかりのほうを
むいてきたよ。
ボクの枝が無数に
まがってのびているのは
なんどもまちがっては
えらびなおしてきたからだ。
下をむいては 上をむき
下をむいては 上をむく。
それでいいと思うんだ。
このまちはときどき寒いからね。
こごえるときもあるんだよ。
じかんをかけて ひかりのほうへ
むりをせずに あるけばいいんだ。
― ひらひらと世のなかから
こぼれおちたような僕に
それはやさしく聞こえてきた
落葉樹の詩。
こごえる季節に
わざわざゆたかな葉を落とし
生きるすがたを教えてくれた
ひかりかがやく せんぱいの詩。