「映画上映会」 僕につけるくすり詩(うた) すぎむらとものり

映画上映会

すぎむらとものり

かいじゅうがいっぱいいて

どんなにこわくてもさ。

それが録画されたものなら

まさか踏みつぶされたり

食べられたりなんてことはない。

テレビから手がでてきて

ポテトチップスをとられたりもしない。

 

例えば会社に

いじわるなおばけがいて

どんなにきらいでもさ。

おばけと話したりして

関わりあっているとき以外は

ぜーんぶ頭のなかの映像。

それは録画されたもの。

ほんものじゃあない。

 

家にいるとき思いだしたり

おふろのなかで思いだしたり

手に汗をにぎる映像に

僕はついついハマリこむけど。

 

それは映像だよ。

それは過去だよ。

それはぜーんぶ録画されたもの。

 

どんなかいじゅうも

どんなおばけも

目の前にいなければ

僕にふれることもできない。

 

それは映像だよ。

それは過去だよ。

それはぜーんぶ録画されたもの。

僕の頭が勝手にはじめる

映画上映会。

 

現実じゃないものに

幕をおろすのは僕。

今 目の前のことを

ていねいに楽しむだけで

勝手に幕はおりてゆくよ。