「おせんべいの詩(うた)」 僕につけるくすり詩(うた) すぎむらとものり

おせんべいの詩(うた)

すぎむらとものり

たぶん僕は悩むのが好きで

たぶん僕は考えるのが好きで

それはもう性分だからしかたない。

このままでいいや。

そう開き直ってから

生きてゆくのが楽しくなってきた。

それはやっぱり君に会えたから。

 

僕がずっと考えこんでいるとなりで

君はおせんべいを食べている。

ボリボリ。ボリボリ。

少しにらむ僕に君はかたまる。

この僕の真剣さに

その音はどうなんだろう。

えんりょぎみのボリボリが

またボリュームをあげる。

ボリボリ。ボリボリ。

 

こうばしいにおいにさそわれて

僕もついおせんべいに手をのばす。

ボリボリ。ボリボリ。

ずるいなあ。ずるいなあ。

おせんべいを食べていると

いろんなことがどうでもよくなるよ。

 

ボリボリ。ボリボリ。

考えこまない君のほうが

上手に生きてゆけるなんて

ずるいなあ。ずるいなあ。

神さまずるいよ。

 

「おまえは悩むのが好きで

 おまえは考えるのが好きで

 そうれはもう性分だから

 あきらめなさい。

 それを自分の成長のために

 使いなさい。

 それを人のために

 使いなさい。」

 

胸の声に僕はまた考えこむ。

すると小気味よく

聞こえてくるんだ。

 

ボリボリ。ボリボリ。

ああ おいしいねえって

おせんべいの詩。

ほらね。

かたい僕の頭を

あっさりとほどく。

 

ああ おいしいねえって

君がまたわらう。

僕のこころがひらいてゆく。

 

そうだね。そうだね。

君がくれるしあわせの詩。